淡路島とお香

淡路島とお香

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淡路島とお香

香司が伝える淡路島と香りの話

日本人は古くから香りと関わってきました。
香りは仏教と関係が深く、仏教の広がりと共に全国へ伝えられたと言われています。
また、淡路島は香木伝来の地とも伝えられる場所。
ここでは淡路島とお香の関わりや香りの基礎をお伝えします。
知識を得ることで、暮しの中でより香りを楽しめるはずです。

香木伝来の地淡路島

香木伝来の地淡路島

『日本書紀』には、推古天皇3年(595年)4月、「沈水、淡路島に漂着」と記されています。
淡路島に流れついた「沈水(じんすい)」とは、「沈香(じんこう)」という香木のこと。
その木を焼くと良い香りが広がったといい、その香木は朝廷へ献上されました。
これが日本での香りにまつわる最古の記録。
その香木は、ご神体として淡路島にある「枯木神社」に祭られています。
そして現在、淡路島は線香の生産シェア70%を誇る日本一の産地として知られています。

香木が漂着したのが「4月」、「香」の字を分解すると「一、十、八、日」となることから、
4月18日が「お香の日」として制定されました。(1992年4月、全国薫物線香組合協議会により制定)

香りの原料

香りの原料

香りの源となる原料には、さまざまな種類があります。
木材そのものが香りを持つ香木、樹脂、果実、樹皮などの植物性原料のほか、
動物性原料まで含めると数十種類。
どれもが自然由来のため、今では入手困難な原料も存在します。
菊寿堂では何種類もの原料を調合して香りを生み出しており、組み合わせによって無限のバリエーションが生まれます。

  • 伽羅

    伽羅きゃら

    産地
    ベトナム

    香木の一種「沈香」のなかでも最高級品。
    木質部の樹脂が凝縮し、枯れる過程で熟成して生まれたもので、たいへん貴重な香木です。

  • 沈香

    沈香じんこう

    産地
    ベトナム、タイ、
    インドネシア、
    マレーシア、カンボジア

    沈丁花科の木の樹脂が長い時間をかけて変質したもの。「水に沈む、香りのする木」ということから「沈水香木」、略して「沈香」と呼ばれています。

  • 白檀

    白檀びゃくだん

    産地
    インド、インドネシア、
    オーストラリア

    香りの原料として最もベーシックな香木で、甘く爽やかな香りが特徴。お香の原料のほか、薬用、薫香用、彫刻用などにも使われています。

  • 大茴香

    大茴香だいういきょう

    産地
    中国

    ダイウイキョウ(マツブサ科)の果実を乾燥させたもの。「八角茴香」とも呼ばれており、中華料理の香辛料としても知られています。

  • 木香

    木香もっこう

    産地
    中国、インド

    主にキク科の植物の根を乾燥させたもの。防虫効果をはじめ、鎮痛、消炎などの効果が期待できます。

  • 山奈

    山奈さんな

    産地
    中国、インド

    バンウコン(ショウガ科)の根茎を乾燥させたもの。インドなどではスパイスとして料理に使われることもあります。

  • 安息香

    安息香あんそくこう

    産地
    マレーシア、インドネシア

    安息香樹(エゴノキ科)の樹脂。去痰剤や防腐剤に用いられるほか、薬用として解熱、腹痛、鎮痛剤にも使用されています。

  • 乳香

    乳香にゅうこう

    産地
    アフリカ、中近東

    ニュウコウジュ(カンラン科)の幹から渗み出した樹脂。キリスト教では、儀式における焚香料にも用いられます。

  • 龍脳

    龍脳りゅうのう

    産地
    インドネシア、マレーシア

    リュウノウジュ(フタバガキ科)から採取される白色の結晶で、防虫剤としても有名。薬用では去痰薬などに使用されます。

  • 貝香

    貝香かいこう

    産地
    アフリカ

    巻貝の蓋の部分で生臭い香りが特徴。主に保香剤として香りを安定させるために使用されます。現在は南アフリカ産のものが主流。

  • 丁子

    丁子ちょうじ

    産地
    アフリカ、マレーシア、
    インドネシア

    チョウジノキ(フトモモ科)のつぼみを乾燥したもの。「クローブ」とも呼ばれており、古くからスパイスとして活用されています。

香りの分類や効能

香りの分類や効能

香りを鑑賞する日本独自の芸道「香道」において、香りの分類や鑑賞の基本とされる「六国五味」。
中国の詩人が香りの持つ効能について謳った「香十徳」。
奥深い香りの世界に触れることができます。

六国五味りっこくごみ

木の産地によって品質を分類したのが「六国」。
香りを味の要素に例えたのが「五味」。
室町時代、足利義政の臣・志野宗信が中心となって
完成させたものと言われています。

五味とは?

  • 甘(カン)

    甘い

  • 苦(ク)

    苦い

  • 辛(シン)

    辛い

  • 酸(サン)

    酸っぱい

  • 鹹(カン)

    塩辛い

六国とは?

  • 伽羅(キャラ)

    ベトナム
    東南アジア

    其のさまやさしく、位ありて、苦を主(つかさど)るを上品とす。自然とたをやかにして、優美なり。其品たとへば宮人のごとし。

  • 羅国(ラコク)

    タイ
    東南アジア

    自然に匂ひするど也。白檀の如き匂ひ有りて、多くは苦を主る。たとへば武士の如し。

  • 真那賀(マナカ)

    マラッカ
    マレー半島南西

    匂ひかろく艶なり。早く香のうするを上品とす。匂ひにくせ有り。たとへば女のうちうらみたるが如し。

  • 真南蛮(マナバン)

    マナンバール、インド南西、
    マラバル海岸地方

    味甘を主るもの多し。銀葉に油多く出る事真南蛮のしるしとす。然共、外の列にも有也。師説を受くべし。真南蛮の品、伽羅を初め其余の列よりも賤しく、たとへば民百姓の如し。

  • 寸聞多羅(スモタラ)

    スマトラ島

    前後に自然と酸事を主る。上品は伽羅にまがふなり。然共、位薄くして賤しき也。其品たとへば地下の衣冠を粧ふたるが如し。

  • 佐曽羅(サソラ)

    サスバール(インド)
    チモール島

    匂ひひややかにして酸。上品は炷出し伽羅にまがふ也。自然にかろく余香に替れり。其品、たとへば僧の如し。

香十徳こうじゅっとく

北宋の詩人である黄庭堅によって記された漢詩で、
香の効能について説かれたもの。
「香り」は、量ではなく質が重要とされます。
日本では一休宗純によって
広められたと言われています。

  • かんかくきじん 感格鬼神

    感覚が研ぎ澄まされる

  • しょうじょうしんじん 清淨心身

    身も心も清らかになる

  • のうじょおえ 能除汚穢

    穢れを取り除く

  • のうかくすいみん 能覺睡眠

    眠気を覚ます

  • せいちゅうじょうゆう 静中成友

    静けさの中に
    やすらぎを得る

  • じんりゆかん 塵裏偸閑

    忙しいときにも
    心を和ませる

  • たじふえん 多而不厭

    多くあっても
    邪魔にならない

  • かにいそく 寡而為足

    少なくても
    十分香りを放つ

  • きゅうぞうふきゅう 久蔵不朽

    年月を経ても朽ちない

  • じょうようむしょう 常用無障

    常用しても害がない